食の分野で唱えられてきたトレーサビリティーが、住の分野でも重視されるようになっています。トレーサビリティーとは、ある物が生産され消費あるいは廃棄されるまでの過程を追跡できることを言います。
私たちが使う木材も、トレーサビリティーが確立した国産材だけです。
その理由のひとつは安全性です。あまり知られていないことですが、無垢の木でも、加工や流通の過程で防腐や防蟻のために薬剤処理をすることがあります。そうした履歴を明らかにしないまま、市場に出回るケースが少なくないのです。
ある会員がずっと前に建てた家で、こんなことがありました。完成後、建材から放散されるはずのない有害な化学物質が検出されたのです。すべての素材・建材の履歴をたどって原因を追究したところ、疑わしかったのが、一般の材木店から購入した材木でした。
もうひとつの理由は、盗伐や乱伐された材を使いたくないということです。今、木材の生産国は、自国の資源や産業保護のために伐採量を制限したり、輸出税を大幅に引き上げたりしています。それでも不思議なことに、安い外国産の木は出回っています。
国産材でも、治水林など伐ってはいけない山から伐られた木や、管理の目が行き届かない山から勝手に伐り出された材が出回っています。
今、日本の山は材価の低迷によって、木を伐ったら手入れはもちろん、次に植えることができないほど疲弊しています。このままでは、将来は国産材が手に入らなくなるかもしれません。荒れた山は保水力を失い、災害も起きやすくなります。適正な利益を山に戻すことが急がれます。
だから、私たちは木材を生産・加工の過程がわかる産地から直接購入しています。山側との信頼関係が築けたことで、建主さんが新しい家に使う大黒柱を立木の状態で選んだり、伐採現場にご案内したりできるようになりました。
人が植林した人工林は環境破壊の原因だという説があります。植林木の多くはスギやヒノキといった針葉樹で、その林は広葉樹よりも保水力が低いから、というのです。また、同じ樹種ばかりで構成された林は多様な生態系を育めないから、伐ったらそのまま放置して広葉樹の林にした方がいいと言う人もいます。本当にそうなのでしょうか。
日本は国土の7割を森林が占め、その約4割が人工林です。では、あとの6割が前人未到の原生林かというと、そんなことはありません。そのほとんどが、里山や鎮守の森を含む、人が関わってきた林です。
日本人は、昔から近くの雑木林や里山に入っては薪を取ったり炭を焼いたりしてきました。こうした林は人が利用することで木が間引かれ、下草が刈られてきました。今の里山はどうでしょう。人が入らないから繁殖力が旺盛な竹が伸び放題、木の生育を邪魔しています。産業廃棄物の不法投棄が問題になっているところもあります。人工林、天然林を問わず、樹種よりも管理が今の問題なのです。
数十年前に植林された人工林の中には、材価が安すぎて間伐の費用も出ず、放置されている林が全国に多くあります。こうした林では、木が密生して地面まで日が差し込まず、せっかく植えた木も、ひょろひょろとしてモヤシのようです。地面には枯葉が積もって、草も生えません。保水力も低下し、集中豪雨が来たら洪水が起こりやすくなります。もし、こうした針葉樹の林がすべて枯れ、後に広葉樹の森になるとしても、それまでには数百年の時間がかかります。
人間が、一旦関わった森林は、ずっと関わり続けないといけないのです。適切な手入れがされている人工林は、地面に生えた草や低木が水を蓄え土を肥やし、多様な生態系を育んでいます。
日本の山には、単純に使い続けていっても46年間は持つだけの量の木があります。木を伐ったら新しく植え、手入れをし、また伐って大事に使う。この循環を切らないことで、子々孫々まで美田ならぬ美林を残すことができるのです。
インテリア雑誌をめくると、ウォールナットやチェリーといったカタカナの樹種名が並んでいます。横文字の名前だと、いかにも外国の固有種みたいに感じますが、ウォールナットはクルミ、チェリーはサクラ、メープルはカエデ、オークはナラといったように、日本に生えている木も多いのです。こうした木は、植林された針葉樹とは違う、天然の広葉樹です。
これまでは用途が限られていたり、流通が複雑だったりして、国産の広葉樹はスギやヒノキのように大量に市場に出回っていたわけではありません。でも、産地に行けば手に入ります。私たちは、国産のテーブルやカウンター、大黒柱に使っています。
国産の材なら、外国から運んでくるよりも輸送エネルギーが小さくてすみます。生産や流通の過程も辿りやすいから安全性を確かめられます。だから、私たちは日本の山の木を使います。
会員によっては、一番近くの山である県産材を使うことにこだわったり、もう少し緩やかに「日本の山の木」の枠組みで考えたりと、さまざまです。でも、どの会社も「顔の見える山の木」だけを使っています。