中庭、小上がり、吹き抜け、ロフト、リビング階段……。ほしい場所を列挙したら、すべて実現できました。この家を料理にたとえれば、ア・ラ・カルト。一家は、家中に散りばめられた居心地のいい場所を気ままに愉しんでいます。 小上がりの居間は、茶の間といった方が似合いそうです。床面から40cm上がった6畳間で、ご飯を食べたりテレビを観たり。念願の、ちゃぶ台を囲む暮らしが叶いました。
天井板は張らず、大屋根の伸びやかな勾配を現わしにしています。「上が吹き抜けなので、居間にいると家全体が見渡せます。とうとう建ったなあ、良い家だなあと眺めています」と、笑みがこぼれます。キッチンに立つ人と居間に座る人の視線の高さが同じになるので、会話も弾みます。
居間の脇の階段は、学校から帰ってくる子ども達の顔が見えるように、この位置に設けました。宴会を開いた時には、居間からあふれた人がここに座ったこともありました。
ア・ラ・カルトの楽しみは、1階の床板にも見られます。玄関は桜、リビングは栗とトチ、キッチンは梓です。産地はすべて、県内・栗原市。「サンプルを検討する時に迷って、いっそ張り分けることにしたんです」とのこと。色や表情が少しずつ異なる材が、違和感なく並んでいます。
中庭は第2の居間
家にいながらピクニック
この家が完成したのは、2009年の1月です。冬の夜、家族は誰からともなく、薪ストーブの前に集まったといいます。4人座るとぎゅうぎゅうになる小さな場所。森の動物が巣ごもりするように、家族が自然に身を寄せ合います。「暖かいから何となく集まって、火が燃えているのを見ています。それだけで、リラックスするんです」と、奥さま。お嬢ちゃんは、「ネコになる」と、丸くなりました。
芽吹きの季節になると、一家団欒の場所は屋外に移りました。コの字型をした家の、凹んだ部分が木製デッキの中庭です。シンボルツリーのヒメシャラが1本。ベンチも造り付けました。ここに座って、家を見上げながらくつろぐのが、奥さまお気に入りの過ごし方です。ゴールデンウィークには、ここでランチをしました。「今の家がいいのは、庭でピクニックできること」。お兄ちゃんが教えてくれました。
囲われた安心感があるコの字プランは、最初からの希望でした。ご近所さんとの間で視線をうまくコントロールし、お互いのプライバシーに配慮しています。
デッキを降りると、駐車スペースにもなる庭です。ここには、一家総出で芝生の間に枕木を埋め込みました。なんと、枕木は1本1本、鋸で挽いたそうです。ゴールデンウィークは、この作業で終わりました。
「毎週のように何かやっていますね。薪棚をつくったり、収納箱をつくったり」。冬は、朝5時半に起きて薪ストーブに火を点け、週末は薪割りに精を出していたそうです。「そういうことが少しも苦ではないんです。楽しくてしょうがない」。
家を建ててからも大活躍するご主人の様子は、奥さまにとって新発見だったようです。「こんなにマメにやる人とは思わなかった。見直しました」
やっぱり木の家がいい!
洗練されたデザインも新鮮だった
夫妻が家を持つと決めた時、最初に考えたのは建売住宅を買うことでした。用意できる予算では、選択肢は限られていると思っていたからです。自然素材の家には、手が届かないと思っていました。いずれ同居するつもりで、遠くに住むお母さんに聞いたところ、「一緒に住むなら、しっかりした家がいい」。釘を刺されてしまいました。
妹さんに相談したら、「友人が面白そうな工務店で家を建てている」と教えてくれました。それが、住まいの風工房のモデルハウスを訪ねたきっかけでした。
「ハウスメーカーの展示場も回りましたけど、子ども達の反応が全然違ったんです。たいていの場所ではすぐに飽きていたんですが、風工房のモデルハウスでは走り回って伸び伸び遊んでいました。子供も気持ちがいいんだろうなと思いましたね」とご主人。「やっぱり木の家が落ち着く」と、思ったそうです。
奥さまは、暮らしを考えた設計にも注目しました。「大きい家はいらないという話を夫婦でしていたので、コンパクトな風工房のモデルハウスは生活をイメージしやすかったですね。和風でシンプルなデザインもおしゃれだと思いました」
家を形づくるのは、
思い出を刻みつけたモノ達
家の、ちょうど真ん中あたりに、ひと抱えもある丸太の大黒柱が立っています。この柱は、同じ宮城県内の、気仙沼近くの本吉町の県有林で育った杉。家族みんなで選び、伐採を手伝った木です。一家は、木が倒れるところを初めて見ました。奥さまは、「木が倒れたら、そこだけ空が広くなって。その空を占めていたものが今ここにある。不思議な感じがします」と、感慨深げです。
家づくりがスタートした直後には、鳴子温泉近くの山林で行われた植樹祭にも参加しました。森びとの会が毎年参加している、山への恩返し活動です。「木を使う前に使う分を植えたんです」と、夫妻は笑います。
家をつくる時には、家族全員が手を動かしました。それもあって、100%国産材を使い、環境を汚さない素材だけで建てる家は、けっして高嶺の花ではありませんでした。2階の塗り壁は、自分達で施工したもの。玄関灯は、奥さまがつくったステンドグラスです。子ども達も手伝いました。
初めての経験ばかりでしたが、一つひとつの思い出が家に刻まれています。





